金融政策の総括 2016 11 6

書名 暴走する日銀相場
著者 朝倉 慶  徳間書店

 この本は、黒田総裁が率いる日本銀行の金融政策に対する、
総括的な検証をわかりやすく書いたものです。
 金融緩和は、効果がありません。
もう少し正確に書くならば、
日本のように少子高齢化が進む社会においては、
金融緩和は、効果がありません。
 もちろん、デフレの進行をくい止めるという意味では、効果がありますが、
それ以上の意味はありません。
 ましてやマイナス金利は、
金融機関に対するマイナスの影響が大きく有効とは言えません。
 日銀の金融政策の誤りを端的に言えば、
「喉が渇いていない者に水を飲ませることはできない」ということです。
「世界中で、『中立金利』が、ほぼゼロになりつつある」
 著者が指摘するように、
経済には、その時の経済状況に適正な金利が存在します。
 つまり、景気に対して過熱もさせず、冷やしすぎもしない金利を、
「中立金利」と言いますが、
実は、この「中立金利」が世界的に極端に低下しているのです。
 たとえば、「中立金利」が3%であれば、
金利を3%から上げたり下げたりすることで、
経済を活性化させたり冷やしたりするという、
金利による政策効果が期待できるのです。
 ところが、この「中立金利」が、ほぼゼロになってしまったのが、
現在の日本や欧州の状態です。
 そこで、日本銀行は、金利ではなく、
市場にマネーを大量に供給するという作戦に転換しましたが、
それも効果がないので、
再び、金利政策に舞い戻って、
金利を「マイナス」にしました。
 しかし、現在の経済状況では、
「喉が渇いていない者に水を飲ませることはできない」という状態です。
 言い換えれば、日本では、生産年齢人口が急激に減少する一方で、
高齢者が急激に増加している状況では、
生産活動は衰え、消費が活性化しないのは当然でしょう。
 このようなことは、10年も前からわかっていたことです。
にもかかわらず、政治家は政争に明け暮れ、官僚は会議に明け暮れ、
結局、何の進展もないまま、10年が過ぎてしまったのです。
ここにも「失われた10年」がありました。

人口ピラミッド 2005 5 3

書名 「人口ピラミッドがひっくり返るとき 高齢化社会の経済新ルール」
著者 ポール・ウォーレス 翻訳 高橋健次 出版社 相思社

 低迷する個人消費、低迷する株価、低迷する地価。
こうしたものは、バブル経済の崩壊が原因で、傷口さえ治れば、
つまり、過剰な設備、過剰な債務、過剰な雇用が改善されれば、
日本経済も、元に戻ると考えていませんか。
 しかし、三つの過剰と言われた「設備、債務、雇用」が改善しても、
日本経済は、さえない状態が続いています。
 バブル経済の崩壊という「外傷」に目を奪われていますが、
もっと根本的な問題が潜んでいませんか。
 それは、「人口ピラミッドがひっくり返る時」です。
日本経済も、日本の社会制度も、
人口構造がピラミッド型であることを前提として、
成り立っているはずです。
そのピラミッドが、ひっくり返る時、どうなるか。




















































































































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